しかしながら何か知らぬが或る、計画的に私をつねに欺く、この上なく有力な、この上なく老獪な欺瞞者が存している。しからば、彼が私を欺くのならば、疑いなく私はまた存するのである。そして、できる限り多く彼は私を欺くがよい、しかし、私は或るものである...
2023-06-23
吾輩は猫である。名前はまだ無い。 どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪な種族であ...
2023-06-22
## 第一部 観念、その起源、構成、結合、抽象などについて ### 第一節 観念の起源について 人間の心に現れる全ての知覚は二つの別個な種類に分けられ、本書ではそれらを「印象」と「観念」と名付ける。二つの違いは、それぞれが心に湧き出て思考や...
2023-06-20
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、...
2023-06-16
申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ。 はい、はい。落ちついて申し上げます。あの人を、生かして置いてはなりません。世の中の仇です。はい、何もかも、すっ...
2023-06-09
カント哲学以来、デカルト哲学は棄てられた。独断的、形而上学的と考えられた。哲学は批評的であり、認識論的でなければならないと考えられている。真の実在とは如何なるものかを究明して、そこからすべての問題を考えるという如きことは顧みられなくなった。...
2023-05-26
恥の多い生涯を送って来ました。 自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。自分は東北の田舎に生れましたので、汽車をはじめて見たのは、よほど大きくなってからでした。自分は停車場のブリッジを、上って、降りて、そうしてそれが線路をまた...
2023-04-24
## 夜明け前 あるところは岨づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曾川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入り口である。一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いていた。東ざかいの桜沢から、西の十曲峠まで、木曾十一宿はこ...
2023-02-23
## 私の個人主義 私は今日初めてこの学習院というものの中に這入りました。もっとも以前から学習院は多分この見当だろうぐらいに考えていたには相違ありませんが、はっきりとは存じませんでした。中へ這入ったのは無論今日が初めてでございます。 さきほ...
2022-10-26
## 哲学入門 哲学に入る門は到る処にある。諸君は、諸君が現実におかれている状況に従って、めいめいその門を見出すことができるであろう。ここに示されたのは哲学に入る多くの門の一つに過ぎぬ。しかし諸君がいかなる門から入るにしても、もし諸君が哲学...
2022-06-28